CADオペレーターの将来性とは?身につけておきたい資格やスキルを交えて解説
2019.12.02
- CAD・BIMオペレーター
記事ライター:キャドテク編集部
これからCADオペレーターを目指している方は、この職種の将来性や必要とされる資格、スキルなどが気になるところではないでしょうか。CADに関係する資格は多く、また関連するスキルも多岐にわたります。こちらの記事では、その現状をはじめ、どのようなことが求められているのか、資格やスキルと併せて詳しく解説していきます。
目次
CADオペレーターの現状
人材は不足傾向にある
様々な世界で必要とされているCADは、computer-aided designを略したもので、日本語にすれば「コンピューターが補助するデザイン業務」のことを指しています。現在では、建築業や製造業をはじめ、服飾デザインやCGアニメーションなど、様々な分野で使用されています。
そのため、一般的には人材は不足していると言うことができます。なぜなら、CADの操作には基本技能だけでなく、ある程度の専門知識が必要となってくるためです。人材派遣会社や求人サイトでも、もっとも多く必要とされている職種の一つです。
具体的な例をみると、求人サイトでの求人数はおおよそ1割となっています。件数にして数千件単位の募集です。これは全職種においての数字ですから、求人率はとても高いことがわかります。
需要は高い
CADは、現在ではモノづくりの現場では欠かせないツールの一つになっています。真っ先に思いつくのは建築用ですが、建築以外でも自動車や飛行機の製造、機械部品の製造、アパレル産業など様々な職種で利用が進んでいます。その背景には、やはり人手不足と業務の効率化が関わっていると言って良いでしょう。
紙の図面に作図をする場合には非常な手間がかかりますし、製図用紙などのモノ代も発生してきます。CADを使わない現場では人件費や原材料費がどうしてもネックになってしまうわけです。それに比べると、パソコン上で何度もやり直しができるCADの導入は、企業が人件費をおさえる役にも立っているのです。
CADオペレーターというのは、単なる事務職というよりは専門職に近い職業です。そのため、需要の高まりとともに、CAD操作に関するある程度のスキルが求められます。一度はスクールなどに通って基本操作をしっかりと身につけるべきと言えます。しかしそれだけでは十分ではなく、経験、携わっている職種に関する知識、技術というものも必要とされます。
AIに代替される可能性はあるのか
現在ではコンピューターの発達とともにAIも発展しており、いつかCADの業務もAIに奪われてしまうのではないかと危惧している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言うと、AIに代替される可能性は低いです。というのも、AIは現在あるものを分析する能力には優れていても、新しいモノを作りだす能力はいまだ十分ではないからです。
CADオペレーターという職種は、一種の専門職だと言えます。その分野の知識を身につけて、モノづくりをするための設計図を描くことが主な仕事内容です。そのためには、いま自分がどんな分野の仕事に携わっていて、どんな物を作ろうとしているのかをしっかりと理解していなくてはいけません。こうしたことは、現時点のAIでは難しいと言えます。
しかし、単に図面を書くだけであれば、現在でも手書き図面を読み込んでCAD化するソフトが存在するため、設計の分野でも、一部ではAIの導入が進んでいるわけです。ただし、それをするためにはあくまでも専門知識を持った専門家が手書きで図面を起こす必要が出てきます。
現場では、建築士などが直接CADを使って図面を起こすことも多くなってきています。すなわち、建築や製造の専門家のほうが技術を身につけてきているわけです。実際、建築事務所では建築士の資格を持った人間を募集しているケースも多いです。建築現場では、図面を現場で引き直すような機会も多く、建築士も無関係ではいられません。
仕事を続けていくためには、単にソフトを使えれば良いわけではないということが分かります。この業界で生き残っていくためには、関連する資格を取得したり、各業界の専門知識をしっかりと身につけたりすることが大切です。
CADオペレーターの将来性とは?
一定の需要が見込まれる
前述のとおり、専門とする仕事は常に募集がかかっています。モノづくり業界の中におけるCADオペレーターの存在は測りきれないもので、今後も一定数の需要は多いと言えるでしょう。
需要は多いとは言え、将来を見据え、、各業界の専門的な知識や技術を身につけていくことが重要です。
例えば、建築業界で仕事をしているのであれば、建築士やインテリアデザイナーなどの専門性の高い資格を目指しながら技術を磨くと良いかもしれません。
さまざまなスキルや知識を学ぶことが、自分自身の将来性を決定づけていくものとなり得ます。
3次元CAD技術の将来性とは
これまでは2次元CADでの製図が基本であり、現状もこの技術は必須といえます。
しかし、BIMなどの3次元でメインモデルを作成し、そこから2次元の図面を切り出していく手法も確実に増加しています。これまでの2次元作業と共に、様々な面で3次元を扱う機会が増えていくことが考えられます。
今後は「Revit」「ARCHICAD」のような建築系ソフト、「CADWe’ll Tfas」「Rebro」などといった設備系のソフトを扱えるようになったり、2次元CADが、3次元・BIMなどの機能を搭載してきているため、それらの操作を習得することで、対応できる業務の幅が大きく広がるでしょう。
また、モデリングソフトやレンダリングソフトを使用してBIMモデルとの連携を行ったり、法令・基準チェックを行うソフトなど、BIMを取りまく技術や周辺ソフトも多様化してきています。
まずは2次元との仕組みやプロセスの違いを知ることで、身に着けたいスキルを選択してみてはいかがでしょうか。
CADオペレーターはいつまで働ける?
結論から言えば、意欲とスキルがあれば何歳までも働けるというのが正解です。それまでに培ってきた知識・経験が活かせる職場がある限り、高い年齢まで勤務することが可能でしょう。
ただし、転職市場としてみると、年齢を重ねるにつれてだんだん転職が難しくなっていくという実情があります。
求人には年齢制限の記載がないもののほうが多くはありますが、実際に採用されるかどうかという点になると話は変わってきます。
20代~30代の若手層のほうが、ポテンシャルや将来性を踏まえて、経験が浅くても採用されるケースがありますが、概ね30代後半以降はポテンシャルよりも経験を重視して企業側が選考を行うことが多いからです。
もちろん、40代からキャリアをスタートさせる方もいますので一概には言えませんが、できるだけ早く多くの知識・経験を積み上げていくことが、長く働き続けられることにつながります。
CADオペレーターとして生き残るために必要なスキル
職種に関して言えば、様々なスキルが必要とされます。実際に生き残っていくためには、どんな資格を所有しているのがベストなのでしょうか。それは、CADを取り扱う分野ごとに変わってくると言えます。
建築の分野で仕事をしていく中で、スキルアップを目指すのであれば二級建築士が取得できると、仕事の幅が広がっていきます。というのは、単に図面をトレースするだけの仕事であれば、現在では安い海外への発注で済まされるケースも多いからです。建築事務所で仕事をしたいのであれば、CAD操作の習得だけではなく、その分野の知識も身につけるということを意識したほうが良いでしょう。
また、家の内装を手掛ける場合には、インテリアコーディネーターやインテリアデザイナーを目指すこともおすすめです。インテリアコーディネーターとは、インテリア産業協会が用意している資格で、インテリアデザイナーとは日本デザインプランナー業界協会が用意している資格です。どちらも内装のことを熟知していなければ取得できないので、インテリア業界で仕事をする際にはとても役に立ちます。
工業デザインの分野であれば、プロダクトデザイン検定というものがあります。こちらは、商品開発に携わる際に役に立つ資格で、いかにして魅力的なデザインの商品を作るか、ということに焦点が当てられています。また、デザインの実務だけでなく、マネジメントやマーケティングなどの知識も求められるので、働いている会社の業務により深く関わっていけるようになります。
以上のように、仕事を続けていく上で役に立つ資格は様々です。もちろん、実際に取得するまでには至らなくても、業界内の基礎知識などは周知しておいたほうがより良いでしょう。そうすることで、単に流れ作業的に仕事をこなすだけではなく、実際の製品づくりにも徐々に携わっていけるようになります。
生かせる具体的なCADの資格とは
仕事をしていく上では、様々な資格やスキル、経験が役に立つということがお分かりいただけたでしょうか。次に、実際にCAD業務を行う上での操作に関する資格について説明します。
CAD利用技術者試験(2次元)
CAD利用技術者試験(2次元)は、CAD業務を行っていく際のスキルとしては最も基本的なものの一つです。1級と2級資格があり、2級は筆記試験のみですが、1級には実務試験が加わります。また、2級は3カ月程度の修学経験があれば受験可能ですが、1級試験を受けるためには1年程度の実務経験または修学経験が必要とされます。養成スクールでは、この試験への合格を目標としているところも多いです。
建築CAD検定試験
建築CAD検定試験には4級から准1級までの4段階のクラスがあります。このうち4級は高校生の団体受験を対象としたもので、一般の人が受験することはできません。難易度は准1級に近づくほど高くなり、平面図の他に断面図の作成なども求められます。比較的難易度が低いのは3級で、こちらは正確なトレース能力さえあれば問題なく合格できます。あくまでも建築系のCAD製図の作成を意図しているので、建築事務所などで仕事をしたい場合には取得しておくと良いでしょう。
CAD実務キャリア認定試験
CAD実務キャリア認定試験は、主に3次元でのCAD製図能力を図る認定試験です。応募資格はなく、一般からの受験も可能となっています。出題される課目は、3次元CADトレーサー認定試験、3次元CADアドミニストレーター認定試験、CADアドミニストレーター認定試験の3つで、自宅でインターネットでの受験となっているのが大きな特徴です。3次元のCAD製図能力が求められるため、難易度は若干高めだと言って良いでしょう。
オートデスク認定資格プログラム試験
こちらはAutoCADを販売しているオートデスク社が実施している試験です。この試験のメリットとしては、なんといっても世界資格であるという点が挙げられます。試験課題は筆記による問題が30問と実技操作となっています。難点としては、AutoCADに特化した資格であるため、他のソフトを利用している人は受験しにくいという点が挙げられます。難易度はそれほど高くなく、全世界で20万人以上の人が資格取得しています。
Vectorworks操作技能認定試験
こちらはVectorworksの国内総販売元であるエーアンドエー株式会社が主催し実施している認定試験になります。この試験もインターネットを利用して行う試験で、Vectorworksの操作スキルに特化した資格となっています。Vectorworksは3次元も扱えるソフトなので、受験者は3次元のCAD製図にも精通している必要があると言えるでしょう。ただし、現在実施されているのはベーシック認定試験のみで、難易度はそれほど高くありません。
CADオペレーターとして身につけておきたいスキル
仕事の将来性をはじめ、今後求められる資格やスキルについてご紹介してきました。様々な分野の仕事があり、スキルも色々であることが伝わったのではないかと思います。
しかしながら、前項で紹介したCADに関連する資格は、基本的な操作ができるというアピールはできますが、直接的に就職に結びつけることは難しいです。
また、操作するCADソフトは1種類ではありませんし、職場によってはオリジナルソフトを採用していることもあります。ただ、AutoCADなどの汎用CADを中心に操作技術を身につけたほうが転職の際に幅が広がるでしょう。
最後に、今回ご紹介した内容を含め、将来性を決めるポイントはどのようなことなのでしょうか。
やはり「自分の携わっている仕事に対して積極的に向かっていく姿勢」だと言えます。
例えば、建築事務所で働く場合には建築の知識が、インテリア関係の会社で働く場合にはインテリアの知識が、機械製造の会社で働く場合には自社製品に対する理解が大切になってきます。
各分野において専門的な知識を踏まえて仕事に携わっていくのと、知識が乏しい状態で携わっていくとでは、経験の深さが違ってきます。
建築関係であれば、建築士を目指す、取得することを前提に経験を積んでいくのと、単に携わっていくのとでは雲泥の差があると言えます。
デザインの分野では、Illustratorなど各種CGソフトと連携で作業が行われることもあるため、関連するスキルを身につけておくことで、より長く業界で働き続けることができるでしょう。
他にも、職場内でのコミュニケーションやヒューマンスキルもきちんと身につけておくこと、日々進化するCADを取り巻く環境の様々な情報にアンテナを張っておくことも、CADオペレーターとしての将来を左右する大切なポイントとなるでしょう。